JTCでITエンジニアとして約2年半ほど働いてみた感想
なにかと酷評されるJTCで約2年半ほど実際に働いてみた感想
昨今、色々な場所でJTCというワードを聞くようになりました。JTCとはジャパニーズ・トラディショナル・カンパニーという造語であり、意味合いとしては昔ながらの日本企業というのを、特にITリテラシーの低さや働き方が柔軟でない点での側面で取り上げる際に使われる言葉のようです。
とは言え、日本企業の多くが中小零細企業である点を考えると、インターネットビジネスをメインに行っている企業や一部の大企業を除き、日本国内で考えると恐らく半分以上はこのJTCに当てはまるのではないでしょうか。IT化が遅れているとか、働き方が柔軟でないなど、何かと否定的な捉え方をされるJTC企業ですが、実際にJTC企業とはどのような組織なのでしょうか。
ちなみに私は現職がいわゆる典型的なJTCであり、それ以前にはITをメインとした企業でも働いていたことがあるため、多少なりともJTCな組織で働くことについてのイメージや客観的な評価ができるのではないかと考え、本記事を書くに至りました。
JTCとはどんな会社か
まずはJTCと言われる企業はどのような企業なのか、あくまで私の主観ですが簡単に説明したいと思います。
IT化が非常に遅れている
JTCのイメージとしてはこの印象を持っている人が多いのではないでしょうか。既存の業務をひたすら繰り返すことのみを考えている人が多いため、SlackやNotionのようなツールを活用して業務効率化・業務改善を行うという発想がそもそもありません。また勤怠管理を紙の勤怠カードで管理しているなどの点も含まれます。
具体的な業務イメージで考えてみると、
- 未だにエクセルベースでのレポーティング業務(TableauなどのBIツールを利用しない、もしくは利用する文化がない)
- 社内での社員同士のコミュニケーションが電話もしくはメールベース(SlackやTeamsなどのチャットベースでのコミュニケーション導入が進まない)
- 自身の部署の役割を定義できておらず、またあるべき姿も明確にできない(そもそものビジネスリテラシーが低い)
このような感じかと思います。
意思決定が遅く、変革自体に前向きになれない組織
社員数が比較的多い企業に特に発生しがちな課題ですが、組織として既存の慣習に捕らわれてしまい、積極的な業務改善や事業戦略を考えることができないケースが多いです。何となく管理職になってしまった人が多いため、一般的にビジネススクールで学ぶようなビジネスリテラシーを持っている人が非常に少なく、何となく声が大きい人の言うことにあわせて動く風潮があります。
管理職~役員クラスに能力の低い人が集まりがち
人事評価が典型的な年功序列のため、長年組織に居続けた結果として管理職に昇進している人が多く、その結果として本来、管理職としてあるべきリテラシーやスキル、また経験をもちあわせている 人がおらず、部署としてのアウトプットが十分にだせないのが特徴です。
どんな仕事をしているのか
JTC組織で私がどのような仕事をしているのかをご説明します。まずはその前に、私が現職に就く前にどのような仕事をしていたのかを簡単にまとめてみました。
- SIer企業(インフラエンジニア)
- 非ITの事業会社(情報システム部門で業務アプリ運用)
- IT事業会社(データエンジニア)
- フリーランスエンジニア(データエンジニア)
- 非IT事業会社データエンジニア(非IT) ← 現職
といった形で転職等を繰り返して、現職のJTC企業で働いています。
現在、私が所属している部署はマーケティング部門になります。ただ一般的なマーケティング部門というよりは、マーケティングを行う上で必要となる各種データ活用環境を整えるとともに、ビジネス上で使いやすい形のダッシュボード構築や、自社EC部門などでデータを利用した施策を行うためのデータ活用環境を整えるといった仕事をしています。説明がなかなか大変なので、自身の仕事については普段はデータエンジニアと名乗っています。(それでも非ITの人には伝わりませんが・・・)
データ活用環境というのはいわゆるデータレイクやデータウェアハウス(DWH)のことで、社内の様々なデータを一元管理するためのインフラと考えていただければわかりやすいかもしれません。このインフラの設計や構築、運用を日々行っているわけです。
業務自体は専門性が高い仕事となるため、基本的には自分でやることを決めて、それを上司に一応共有だけしておいて、そのあとは基本は一人でもくもくと仕事を進めていく形になっています。
正直、私の仕事の場合はデータエンジニアという仕事の特性(専門性が必要)と、私が現職に入社した経緯が執行役員クラスからのリファラルだったこともあり、結構特殊な位置づけで仕事をやっているため、仕事の進め方において自由が担保されている感じもあります。
JTCの良いところ・悪いところについて
今の組織で働いている中で、良いところと悪いところを簡単にまとめてみました。あくまで私が所属している組織についての話である点をご承知おきください。
JTCの良いところについて
私が所属している組織のケースだと、とにかく社員に良い人が多い印象です。比較するのも何ですが、過去に数社経験したIT企業の社員とは人間性が比較にならないほど、良い人だらけです。あとは社員がとてものんびりしている点も特徴的で、仕事の進め方自体はかなり遅く、業務上であまり明確な期限を決めて仕事をするタイプの人がいない印象です。
ちなみに私が所属している企業については大きく二つのビジネスで成り立っており、そのうち一つのビジネスではコロナ禍も含めてかなり安定的に利益が出ているため、社内ではなんとなく「別に少しくらい業績が悪くても何とかなる」という空気が良くも悪くも漂っている感じです。
ちなみに私が過去に所属していたIT企業(社員数は当時で600名くらい、売上規模は300億円程度)の会社では、ちょっとした業績の下振れなどがあるたびに、かなり社内がピリピリする状況でした。組織の規模にもよるかもしれませんが、よほど規模が大きい会社でもない限りは、主力事業の業績低迷が2年も続けば、かなり窮地に立たされてしまうのが一般的です。
その点、昔ながらのビジネスモデルではありつつも、複数の収益源が確保されているようなJTC企業だと、一つのビジネスが上手くいかなくても、比較的余裕をもって仕事をすることができる印象があります。
JTCの悪いところについて
私の働いている組織も含め、多くのJTCでは業務のIT化が非常に遅れており、また働き方自体がとても原始的なケースが多い印象です。例としては、日々のレポーティング業務が未だにエクセルベースだったり、リモートワークが認められていない、などというケースもあるかと思います。(私の職場はフルリモートではありますが、、)
また、社長を含む経営層のビジネスやITについてのリテラシーがアップデートされていないケースが多く、昨今のビジネス環境に適応できないケースも多く見受けられるかと思います。更に、組織として年功序列であることが多く、組織自体を大きく変えることが非常に難しいということも挙げられます。
ITエンジニアとしてJTCで働くのはありか
JTCといっても企業によって環境は全然違うかと思うので一概に判断することは難しいと思いますが、ビジネスモデルや社員の雰囲気次第では、一般的なIT企業より働きやすい環境で働ける可能性はあるかもしれません。
その際におススメなのは、ある程度立場の上の人(少なくとも本部長クラス以上)からのリファラルで入社することをおススメします。この場合、入社時での待遇面の交渉もしやすく、また仕事の進め方についても色々と融通が利きやすい点があり、仕事がしやすくなる可能性があります。
また重要な点としては、自身の得意分野を明確にしておき、入社時に宣言することです。
「私は〇〇が得意で、xxを行った実績があります。今後、△△プロジェクトを立ち上げて□□を行います!」
と入社時に明確に宣言してしまえば、そもそも上司からの指示を受ける前に自身の仕事を確立できてしまう可能性があります。
転職活動をしながら様子見するも・・・居心地が良すぎて出られず
とは言え、それでもストレスになることも多少はあったり、またITエンジニア的なことをやっている以上は更にレベルの高い組織で働きたいという意欲は常に湧きます。ちなみに昨年あたりに久しぶりに転職エージェントに登録を行い、3社ほど採用面接を受けてみました。その中で1社は内定直前でしたが、今の仕事と比べるととてつもなく忙しくなりそうだったため、結局選考を辞退することに・・・
JTCで働くことのメリットでもデメリットでもあるのですが、勢いのあるイケイケの会社と比べるとやはりプレッシャーが圧倒的に少ないため、日々の仕事から受けるストレスが異常なほど少ないのです。私の場合はそのような環境でもう2年以上も働いているのと、何より年齢的にも40歳を過ぎているため、もし仮にここから100万円~200万円程度の年収アップと引き換えに、あえてストレスまみれの成果にまた飛び出すだけの覚悟は今のところは持てずにいます・・・あと5歳若ければ飛び出したかもしれませんが、、
もしJTCで同じような環境にいて、「もうこんな環境は嫌だ!!転職するんだ!」みたいな気持ちになっている人は、積極的に飛び出したらよいかと思います。(心の中で応援します!!)
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